彼氏のことを好きだった女に原付で轢かれた話➀

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大学生の時に街中の焼き鳥屋でバイトしていた。アルバイト先までは家から自転車で10分くらいなんだけど、その日はに行くときにクロックスにするかマーチンで迷って「おしゃれしたるかぁ」とマーチンにした。大学入学時に買ったMARINというメーカーのクロスバイクに乗っていてお気に入りだった。

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CORTE MADERA SE | MARIN JAPAN

 

たしかその日は23時くらいまで働いて、まかないを食べてから帰った。まかないはいつも焼き鳥丼とかカレーとかだったけど、社長の趣味が海釣りなのでたまに太刀魚がやメバル出てくる、そんな贅沢なまかないの日もある最高のバイト先だった。

バイト先から家まではまっすぐだ。帰りはゆるやかな坂で地味にキツイが、まかないを食べた後なのでちょうどいい運動になる。飲食店が並ぶ通りを抜け、大学の前を通過したらもうすぐ我が家だ。大学前の道路は街頭がついていて見通しがよく、車通りも少ない道路だ。歩道と車道の間には柵があるので、いつも車道の左端を走って帰っている。

その日は小雨が降ったのか地面はすこし濡れていた。
街頭の下を走っていたら突然、後ろからすごい衝撃がきた。必死にブレーキをかけるも、前方に押し出されていき少しずつスピードを緩めながら自転車ごと倒れた。何しろ自転車が多い街だったので、「あぁよそ見してる自転車にぶつけられたんだ」と転びながら頭の中でぼんやり考えていた。

気が付くと左側に倒れた私の上には原付とその原付の持ち主の女が乗っていた。

痛い。重い。

その女の顔、たしかに見覚えがあった。まさかの同じ学部の女ではないか。学科は違うから面識はなかったのだが教室で騒がしくしていたので覚えていたのだ。その女が「痛い」といった。ぶつけられ、今もお前の下敷きになっている私の方が痛いに決まっているのに。

「ふざけんなよ」と心の中でつぶやいた。

 

原付の下から自分を脚を引っこ抜いた。痛い。


 つづく