(2/3)大晦日、ベランダに閉じ込められた話

シャッターをどうにか開けたい。いろんな角度から指をねじ込んで、引っ張ったり押したりしてみる。なんど挑むも、ガシャンガシャンと音をたてるだけでビクともしない鉄壁。 オワッタ・・・ 不動産屋に電話するしかないね、確かサポートがあったはず。 とりあえず電話電話、あれ、私スマホ持っていない。

もしかして・・・

二人とも持っていない。オワッタ。

頼みの綱

大家さんが助けてくれるかもしれない、ベランダから叫ぶわけにもいかないし、玄関から出てきたタイミングで声かけてみるしかない。能天気な私たちは日差しあったかいなあと日差しが当たる場所の取り合いをして大家さんが出てくるのを待ってみる。しかし、全く出てくる気配がない。もう1時間ほど経過しただろうか、光の影の位置が大きくズレていた。それに風が強くなってきて少し肌寒い。嫌な予感しかしなかった。

ベランダから叫ぶ女

恥を忍んで通りかかった人に声を掛けることにした。30代男性に声をかける。

「すいません!ちょっと締め出されてしまって、そこの家が大家さんの家なのでインターホンだけ押し呼び出していただけますか?ほんとすいません。」

男性はかなり困惑している様子だった。急にベランダからお団子頭の女に声かけられたら当たり前に困惑するだろうけど。奇跡的に大家さんと知り合いのようで、呼び出してくれた。

奥さん「あー!こんにちは!どうしました?」

こんにちは!(状況説明)

わたしから不動産サポートに電話してみるのでちょっと待っててください!と家の中に入った奥さん。

悲報と神からの贈り物

しばらく待った。いや、かなり待った。 なんせスマホがないから時間が分からない。出てこない奥さん。もしかして見捨てられたのかと不安でいっぱいになる。すると上から声が聞こえた。ちょうど真上が大家さんの家のベランダだったのだ。
大晦日で混みあっているのかなかなか連絡が取れない。主人と二人で電話をかけ続けているのでもう少し頑張って欲しいと言われた。
そして、寒いでしょうと毛布の差し入れが。これは生きてきた中で最も暖かい毛布、奥さんはなんて徳の高いお方なんだろうか。あんな人に私ははなりたい。




つづく